以前、ブログで紹介した「生きるのが面倒くさい人(岡田尊司)」の本に載っている、ハタネズミを使った愛着の研究が面白かったのでご紹介したい。
↓以前のブログ
popololo-nyanya.hatenablog.com
↑Copilotに書いてもらったハタネズミの絵(かわいい)
ハタネズミのライフスタイルとオキシトシン
ハタネズミ属に属する"サンガクハタネズミ"と"プレーリーハタネズミ"は、遺伝子レベルでは近縁の種であるが、ライフスタイルがまるで違う。具体的には以下のような違いがある。
サンガクハタネズミ
- 山地に住む
- 発情期にだけ異性と交わりを持つが、交尾が終わるともう二度と会うこともない
- 母親は単独で子育てをし、子供は父親を見たこともない
- 母親との関係もあっさりしていて、母親から離されても、あまり泣きもしない
- 授乳が終わると巣穴から追い出され、他人になる
- 簡易な巣穴で単独で暮らす
プレーリーハタネズミ
- アメリカの大草原で暮らす
- 一度夫婦になると、相手が死なない限り、絆を保ち続ける
- 子供との愛着も強く、少し親から離されただけで甲高い叫び声をあげる
- 夫婦は協力して子育てをする
- 立派な巣を作って大家族で暮らす
このライフスタイルの違いは、脳の側坐核(そくざかく)にあるオキシトシン受容体の違いが要因であるというのだ。
オキシトシンとは…
愛情を司るホルモンであり、脳内では神経ぺプチドとして働く。このホルモンが働くことで親密な感情が生まれたり、社会性が高まったり、ストレスや不安が軽減される。
プレーリーハタネズミでは、脳の側坐核という領域にオキシトシン受容体が多いが、サンガクハタネズミにはほとんど認められない。
側坐核にオキシトシン受容体が豊富にあると、オキシトシンの分泌が活発になるような行為(他者とのふれあい、親密な関係、子育て)といったことが、より大きな喜びを生み出すと考えられる。
プレーリーハタネズミは、パートナーや家族と触れ合うことで、大きな喜びを得られるため、強い絆が維持され、サンガクハタネズミは、そうした喜びが手に入らないため、単独で暮らすことを好むという。
この愛着の仕組みは哺乳類に広く共有されており、ハタネズミも人間も同じオキシトシン・システムを使っている。
オキシトシン受容体の分布を左右するのは?
人間の場合、オキシトシン受容体の分布が豊富な人と乏しい人がいる。それを左右するのは、幼い頃の環境である。特定の養育者から、良く世話を受けた人では、オキシトシン受容体が豊富に存在するようになり、その結果、オキシトシンの働きが良い。
ところが、幼い頃、愛情や世話が不足した環境で育つと、オキシトシン受容体の発達が悪くなってしまう。
すると、人と交わることや子供を育てることでは喜びが得られず、もっと直接的に側坐核を刺激するような物質や行為にのめりこみやすい。それが、ギャンブルや薬物、食べることや買い物への依存を生む。そうすることでしか、生きる喜びを味わえないからだ。幼い頃、愛情不足を味わった人で、依存症や過食症のリスクが増すのは、そうした理由によると考えられる。
人間はおおむねプレーリーハタネズミ型のライフスタイルで暮らしてきたが、この数十年の間に近代化による産業化、都市化によって、急速にサンガクハタネズミ型のライフスタイルを選択する人が増えていると筆者は言う。
現代人がサンガクハタネズミ化しているというのは、なんとなく納得してしまうところがある。
最後に、記事の参考にさせていただいた岡田さんの本のアフィリンクを張っておきます。