スーパーに並ぶ多種多様な食用油。
どの油を買えばいいのか、いつも迷っていた。
この際だから徹底的に調べてやろうと、図書館で関係しそうな本を何冊か借りて読んでみた。
今日は自分の脳の整理も兼ねて、油についての知識をまとめていきたい。
なお、今回参考にさせていただいた本はブログの最後に載せた。
食用油の成分について
まずは基礎知識となる脂肪酸の話から。
脂肪酸の種類を表1に示した。
表1 食品中に含まれる主な脂肪酸の例
「脂質やトランス脂肪酸の基本的な情報」(農林水産省) (https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/fatty_acid.html)を加工して作成
脂肪酸は炭素の鎖で出来ており、二重結合の有無で飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれる。
飽和脂肪酸は二重結合がなく、常温で固体。動物に多く含まれる。
不飽和脂肪酸は二重結合があり、常温で液体。植物や魚に多く含まれる。
スーパーでよく見る食用油をいくつかピックアップして、それに含まれる脂肪酸を図1にまとめた。
「日清オイリオ オンラインショップ」(https://shop.nisshin.oilliogroup.com/shop/pages/column_210825_02.aspx)
「日清オイリオ 商品情報サイト」(https://www.nisshin-oillio.com/oil/qa/qa02.html)
「文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html)よりデータを引用し作成
ヒトの必須脂肪酸
人間は、酵素が十分にない未熟児以外、リノール酸とα-リノレン酸だけ摂れば必須脂肪酸の欠乏症状は出ない。
リノール酸は動物の成長や生殖生理を保つために必要であり、α-リノレン酸は脳・網膜機能を保つために必要な脂肪酸である。
体内では以下のように代謝される。
※油の正しい選び方・摂り方 最新 油脂と健康の科学(奥山治美, 國枝英子, 市川祐子)より「図3 主な脂肪酸の体内での代謝(変換)を三系列に分ける」を加工して作成
アラキドン酸やEPAなどから各種のホルモン様物質が作られるので、これらが健康に深くかかわっている*¹。
n-6 : n-3の比が大切
n-3、n-6系不飽和脂肪酸とは?
α-リノレン酸やDHA・EPAは、二重結合の位置がメチル基のある炭素から3番目なので、n-3系(ω3)不飽和脂肪酸と呼ばれている。
n-6 :n-3 の比が崩れるとどうなるか?
n-6系不飽和脂肪酸を過剰摂取し、n-3系不飽和脂肪酸を摂取しないとどうなるのかというと・・・
細胞膜リン脂質のアラキドン酸が増え、アラキドン酸由来の炎症メディエーターが多く産生される。
この状態が続くと、アレルギー過敏症を引き起こしたり、発癌を促進したりするという*¹。
また、脳や心臓の血管疾患や炎症、高血圧などの発症の危険性が高まるとも考えられているそうだ*²。
ちなみに、n-6 : n-3比を3に抑えたラコールという流動食は、患者の術後の炎症を抑えるのに有効であることから医療現場で使われている。ラコールの原料にはエゴマ油が使われている*¹。
n-3系(ω3)不飽和脂肪酸は不足しがち
理想的なn-6 : n-3の比率は4 : 1という説がある*²。
n-6系のリノール酸は、ほとんどのタンパク質源(魚、肉、卵、大豆、乳製品)や、お菓子・パンなどの添加油に含まれているので、食事をきちんと摂取している人であれば通常は不足しない。
しかし、n-3系の油は摂りづらい。図1を見れば分かるようにα-リノレン酸を含む食用油は少ない。EPA・DHAは魚介類に多く含まれているため、食の欧米化で魚を食べなくなってきた日本人は不足しがちである。
アレルギー疾患、動脈硬化にn-3系不飽和脂肪酸の摂取が効果的*³とされていたり、癌細胞の発育を抑える作用*²や、心疾患リスクを下げるはたらきもある*¹。
意識してn-3系のα-リノレン酸やDHA、EPAを摂ることが大切である。
エゴマ油の注意点
我が家はn-3系不飽和脂肪酸のα-リノレン酸が豊富に含まれているエゴマ油を食事に取り入れ始めた。
以下アフィリンク
しかし、エゴマ油は弱点がある。加熱に弱いのだ。
n-3系脂肪酸は、ヘミン(ヘム酸化物)など触媒の存在下で加熱すると容易に分解して揮発性の物質アルデヒド(4-oxo-2-hexenal)ができ、この物質はDNAなどの遺伝情報に変化を起こす変異原性がある*¹。また、加熱により酸化しやすいため、炒めたり揚げたりする用途には向かない。
しかも、他の油と比べると値段が高い。酸化しやすいので早めに使い切らないといけないという注意点もある。
我が家はエゴマ油を手作りドレッシングに活用している。
これがまあまあ旨い。
エゴマ油は単体で食べると刈りたての雑草っぽい独特のニオイがあるのだが、ドレッシングに混ぜると気にならなくなり、むしろまろやかなコクとなって旨い。
ドレッシング作りが面倒な時は、市販のノンオイルドレッシングにエゴマ油を混ぜてもおいしくいただける。
健康に関しての効果は諸説あるので過信はしないが、夫が持病の通院で頻繁に血液検査をするので、エゴマ油の効果が検査数値にあらわれる可能性が微レ存?興味深く経過観察したいと思う。
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今回はここまで。
次回へ続く
popololo-nyanya.hatenablog.com
【参考書籍】
*1 油の正しい選び方・摂り方 最新 油脂と健康の科学 奥山治美 國枝英子 市川祐子 2008年9月30日 第1刷発行
*2 油はすごい 人気管理栄養士が教える、体を守る油のとり方 足立香代子 2016年3月20日発行
*3 基礎栄養学 第5版 坂井堅太郎 編 2021年2月10日発行
*4 肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか 「糖質過剰」症候群Ⅱ 清水泰行2021年11月30日発行
*5 Newton別冊 専門家が教える正しい知識と理想の食生活 食と栄養の大百科 増補第2版 2021年8月5日発行
*6 Newton 別冊 食材から調味料、安全性まで、毎日の食事に役立つ知識が満載 科学的に正しい食品の大百科 改訂第2版 2022年10月5日発行